スペインの「16歳未満SNS制限」から考える、ポピュレーションアプローチで見る子どもとデジタル社会の未来

ジャーニーアドバイザーの宮崎豊久です。

最近、スペインが「16歳未満のSNS利用を制限する方針」を発表したというニュースが話題になりました。これは単なる規制の話というより、デジタル社会の中で子どもをどう守るかという、世界共通のテーマを象徴している動きだと感じます。

この問題を考える上で重要なのが「ポピュレーションアプローチ」という視点です。少し聞き慣れない言葉かもしれませんが、これは簡単に言うと「問題を抱えた人だけに対応するのではなく、社会全体の環境を整えることで、全体のリスクを少しずつ下げていく」という考え方です。

例えば健康分野では、病気になった人だけを治療するだけでなく、食生活や運動習慣など社会全体の環境を改善することで、病気になる人自体を減らそうとします。SNSの問題も同じで、一部のトラブルだけに対応するのではなく、子どもたちを取り巻く環境全体を見直そうという発想です。

実際、SNSは便利なツールであり、人とのつながりや情報発信の可能性を広げてくれました。しかし一方で、子どもたちにとっては刺激が強すぎたり、長時間利用による生活リズムの乱れ、情報ストレス、他者との比較による自己評価の揺らぎなど、目に見えにくい影響も指摘されています。問題として表面化しなくても、静かに負担が蓄積しているケースは少なくありません。

スペインの年齢制限の議論は、こうした背景を踏まえ、家庭だけに判断を委ねるのではなく、社会として一定の基準を設けようという動きと見ることができます。基準があることで、保護者の迷いや負担が減り、教育現場も共通認識を持ちやすくなります。これはポピュレーションアプローチの典型的な発想と言えるでしょう。

では、日本はどうしていくべきなのでしょうか。

日本の場合、スマートフォンとSNSはすでに生活インフラに近く、単純な禁止だけでは現実的ではありません。むしろ隠れ利用やルールの形骸化を招く可能性もあります。だからこそ、日本では「禁止か自由か」という二択ではなく、社会全体のリスクをどう下げるかという視点が重要になります。

まず必要なのは、情報教育の質の向上です。現在の情報モラル教育はトラブル回避が中心ですが、それだけでは十分とは言えません。SNSの仕組み、アルゴリズムによる情報の偏り、評価や反応に気持ちが左右されやすい構造など、心理・社会・技術の側面を含めて理解する教育が求められます。子どもだけでなく、大人も学び直す必要があります。

次に、家庭の孤立を防ぐ仕組みです。保護者の中にはSNSの変化についていけず、どう関わればいいのか悩む人も多いでしょう。親向けのリテラシー教育や相談窓口、学校や地域との連携など、家庭だけに責任を押し付けない仕組みづくりが重要です。

さらに、プラットフォーム側の責任も無視できません。年齢確認の強化、過度な利用を促す設計の見直し、情報表示の透明性などは個人では対応できない領域です。社会としてルールを整えていく必要があります。

また、日本特有の文化として、周囲との調和や同調を重視する傾向があります。これは良い面もありますが、SNS上では他者の反応に過度に敏感になり、気分が揺れやすくなることもあります。そのため、日本では単なる規制だけでなく、心の距離の取り方や情報との向き合い方まで含めた教育が必要だと感じます。

私はこれまで、子どもとインターネットの安全に関わる活動に携わってきましたが、強く感じるのは「個人の努力だけでは限界がある」ということです。家庭だけ、学校だけ、企業だけではなく、社会全体で環境を整えていく視点が不可欠です。

スペインの動きは、日本にとっても大きなヒントになるでしょう。デジタル技術はこれからも進化し続けます。その流れを止めることはできません。だからこそ、技術を否定するのではなく、人間の発達や心の健康と調和する形で社会を設計し直していくことが重要です。

社会全体のリスクを少しずつ下げる取り組み。それこそがポピュレーションアプローチの本質であり、子どもたちの未来を守るための現実的な方法なのではないでしょうか。

ジャーニーアドバイザー 宮崎豊久

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