スマホやゲームは「心の育ち」のきっかけに——夏休み、子どもとデジタルとの向き合い方

スマホやゲームは「心の育ち」のきっかけに——夏休み、子どもとデジタルとの向き合い方

はじめまして!
インターネットポリシースペシャリストで学校課題解決支援専門家の宮崎豊久と申します。
過去には子どもたち向けのインターネットセキュリティー、フィルタリングシステムの開発に従事しておりました。
現在はネットトラブルに巻き込まれた子どもたちや保護者の支援を行い、全国で講演活動を続けており、オルタナティブスクールジャーニーのアドバイザーを担当させていただいております。

さて、夏休みになると、子どもたちは時間にも空間にも、ぐんと自由が広がります。
そんな中、保護者の多くが気にかけるのが「スマホやゲーム、どうさせればいいのか」ということ。
実際に私も各地で講演をしていて、一番多い保護者の不安は、スマホやゲームの長時間利用です。

「長時間使っていて大丈夫?」
「ゲームばかりになってしまわない?」

でも、こうした不安はとても自然なものです。
私自身も子育てをしていて、タブレットにしがみつく姿を見ていて不安になることも多いです。

けれど、発達心理の視点で見てみると、スマホやゲームの世界には、実は子どもたちの成長にとってとても大切な“育ちの種”がたくさん潜んでいます。

■ 「やってみたい」「もっと知りたい」は、子どもからのサイン
小学校低学年の子どもたちは、今まさに好奇心が花開く時期。
見るもの、触れるものすべてに「これはなに?」「やってみたい!」という探究心を向けていきます。
ゲームやスマホのアプリも、その延長にあるものです。

たとえば、あるアプリに夢中になって操作を覚えようとする姿は、まさに能動的な学びの始まり。
そこには、「どうすればうまくいくか」「こうやってみたらどうか」という試行錯誤や、論理的思考、問題解決の芽が見え隠れしています。

また、動画編集アプリやお絵描きアプリを通して自分の作品をつくる姿には、自己表現欲求や創造性が育っている証が見て取れます。
こうした活動は、まさに発達段階における「自己と他者の区別」「自分の考えを形にする力」と深く関わっているのです。

■ 感情のコントロールも「遊び」の中で育つ
ゲームに熱中するあまり、うまくいかなくて泣いたり怒ったりすることもあるかもしれません。
でもそれは、「悔しい」「思い通りにいかない」という感情と向き合う貴重な機会。
そして、感情のコントロール(情動調整)を学ぶ発達段階でもあります。

そうした場面に出会ったときこそ、私たち大人ができることは“止める”ことではなく、一緒に言葉にしてみることです。

「うまくいかなくて、悔しかったんだね」
「どうやったら次はできるか、一緒に考えてみようか」

このように共感の言葉をかけるだけで、子どもは「気持ちを受け止めてもらえた」という安心感の中で、次の一歩を踏み出す力を育てていきます。

■ “一緒にのぞく”だけで、親子の距離が近づく
低学年の子どもにとって、「大人と共有する体験」はとても大きな意味を持ちます。
スマホやゲームも、その世界を「ただ与える」のではなく、「一緒にのぞく」ことで、親子の距離がぐっと近づきます。

「どんなゲームしてるの?」
「その動画、どこが面白いの?」

そんな問いかけから始まる会話の中に、子どもの心の世界が見えてくることもあります。

大切なのは、“見張る”のではなく、“伴走する”姿勢です。
子どもが自分の興味や感情を安全に広げられるよう、親がそっと横にいる。
その関係性が、デジタルとの健やかなつきあい方を育てる土台になります。

■ デジタルとのつきあいは、これからを生きる力になる
私たちが子どもだった頃とは違い、今の子どもたちは「デジタルとともに育つ世代」です。
スマホやゲームを避けて通ることはできません。むしろ、それらの世界をどう“味方”にしていくかが問われる時代です。

だからこそ、ルールで縛るよりも、対話を通じて育てる関係性が大切です。

「どう使えば疲れないかな?」
「どんな使い方なら気持ちよく過ごせるかな?」

そんなふうに、一緒に感じ、一緒に考えていくこと。
それが、子ども自身が自分で選び、コントロールする力につながっていきます。

この夏、スマホやゲームとの時間が、ただの「暇つぶし」ではなく、
心の育ちと、親子の関係を深める時間になるように。

私たち大人にできることは、「禁止」ではなく、「信じて見守り、ときどき手を添えること」。

デジタルと出会うその瞬間から、子どもはすでに、“未来に向かって育っている”のです。

■ それができたら苦労しないよね、という声に寄り添って

ここまで読んでくださった方の中には、
「それができたら苦労しないよ」
「毎日イライラしてるのに、そんなふうに穏やかに見守れない」
そんなふうに感じた方もいらっしゃるかもしれません。

本当にその通りだと思います。
日々の生活は予定通りに進まないことばかり。
子どもはスマホをなかなか手放さず、こちらはご飯や洗濯や仕事に追われて、つい大きな声を出してしまう——そんな日常の中で「対話しながら見守って」と言われても、現実は甘くないですよね。

だからこそ、これは“すぐに全部できるようになること”ではなく、少しずつの積み重ねでいいと私は思っています。

完璧を目指さなくていい。
うまくできなかった日があっても大丈夫。
「今日は一緒にスマホの写真を1枚だけ見てみた」
「ゲームの途中で、どんなところが好きなの?と聞いてみた」
それだけでも、立派な一歩です。

子どもにとって大切なのは、“いつも優しく見守ってくれる親”ではなく、
“たまに失敗しながらも、何度でも向き合ってくれる親”なのかもしれません。

この夏、完璧じゃなくていいから、
ちょっとだけ視点を変えてみる。
ちょっとだけ、話を聞いてみる。
そんな「小さな実践」が、やがて大きな育ちへとつながっていくと信じています。

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